障害等級決定基準
2 障害等級決定の基準 (1) 脳の障害 ア 器質性の障害 脳の器質性障害については、「高次脳機能障害」(器質性精神障害)と「身体性機能障害」(神経系統の障害)に区分して、障害等級を決定するものとする。 また、「高次脳機能障害」と「身体性機能障害」とが併存する場合には、「高次脳機能障害」と「身体性機能障害」のそれぞれの障害の程度を踏まえ、全体病像を総合的に評価して障害等級を決定するものとする。 ( ア ) 高次脳機能障害 高次脳機能障害については、意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続力・持久力及び社会行動能力の4つの能力(以下「4能力」という。)の各々の喪失の程度に着目して評価を行うものとする。ただし、高次脳機能障害による障害が第3級以上に該当する場合には、介護の要否及び程度を踏まえて決定すること。その際、複数の障害が認められるときには、原則として障害の程度の最も重篤なものに着目して評価を行うものとする。 なお、高次脳機能障害は、脳の器質的病変に基づくものであることから、 MRI 、 CT 等によりその存在が認められることが必要となる。 ( 注 ) @ 高次脳機能障害とは、認知、行為(の計画と正しい手続きでの遂行)、記憶、思考、判断、言語、注意の持続などが障害された状態であるとされており、全般的な障害として意識障害や痴呆も含むとされている。 A 4能力を評価する際の要点については、後記の(参考)の「○高次脳機能障害の評価の着眼点」を参照のこと。 a 「高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの」は、第1級とする。 次のものが、これに該当する。 (a) 重篤な高次脳機能障害のため、食事、入浴、用便、更衣等について常時他人の介護を要するもの (b) 高次脳機能障害による高度の痴ほうや情意の荒廃があるため、常時他人の監視を要するもの b 「高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、随時他人の介護を要するもの」は、第2級とする。 次のものが、これに該当する。 (a) 重篤な高次脳機能障害のため、食事、入浴、用便、更衣等について随時他人の介護を要するもの (b) 高次脳機能障害による痴ほう、情意の障害、幻覚、妄想、頻回の発作性意識障害等のため、随時時他人の監視を要するもの (c) 重篤な高次脳機能障害のため、自宅内の日常生活動作は一応できるが、1人で外出することなどが困難であり、外出の際には他人の介護を必要とするため、随時他人の介護を要するもの c 「生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高次脳機能障害のため、終身にわたりおおよそ労務に服することができないもの」は、第3級とする。 次のものが、これに該当する。 (a) 4能力のいずれか1つ以上の能力の全部が失われているもの ( 例 1) 意思疎通能力が全部失われている例 職場で他の人と意思疎通を図ることができない場合 ( 例 2) 問題解決能力が全部失われている例課題を与えられても手順どおりに仕事を全く進めることができず、働くことができない場合 ( 例 3) 作業負荷に対する持続力及び持久力が全部失われている例 作業に取り組んでもその作業への集中を持続することができず、すぐにその作業を投げ出してしまい、働くことができない場合 ( 例 4) 社会行動能力が全部失われている例 大した理由も無く突然感情を爆発させ、職場で働くことができない場合 (b) 4能力のいずれか2つ以上の能力の大部分(一般平均人の4分の3程度)が失われているもの d 「高次脳機能障害のため、極めて軽易な労務のほか服することができいもの」は、第5級とする。 次のものが、これに該当する。 (a) 4能力のいずれか1つ以上の能力の大部分(一般平均人の4分の3程度)が失われているもの ( 例 ) 問題解決能力の大部分が失われている例 1人で手順どおりに作業を行うことは著しく困難であり、ひんぱんな指示がなければ対処できない場合 (b) 4能力のいずれか2つ以上の能力の半分程度(一般平均人の2分の1程度)が失われているもの e 「高次脳機能障害のため、軽易な労務のほか服することができないもの」は、第7級とする。 次のものが、これに該当する。 (a) 4能力のいずれか1つ以上の能力の半分程度(一般平均人の2分の1程度)が失われているもの ( 例 ) 問題解決能力の半分程度が失われている例 1人で手順どおりに作業を行うことに困難を生じることがあり、時々助言を必要とする場合 (b) 4能力のいずれか2つ以上の能力の相当程度(一般平均人の4分の1程度)が失われているもの f 「通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」は、第9級とする。 高次脳機能障害のため4能力のいずれか1つ以上の能力の相当程度(一般平均人の4分の1程度)が失われているものが、これに該当する。 ( 例 ) 問題解決能力の相当程度が失われている例 1人で手順どおりに作業を行うことに困難を生じることがあり、たまに助言を必要とする場合 g 「通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、多少の障害を残すもの」は、第 12 級とする。 4能力のいずれか1つ以上の能力が多少失われているものが、これに該当する。 h 「通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、軽微な障害を残すもの」は、第 14 級とする。 MRI 、 CT 等による他覚的所見は認められないものの、脳損傷のあることが医学的にみて合理的に推測でき、高次脳機能障害のためわずかな能力喪失が認められるものが、これに該当する。 (参考) 高次脳機能障害の評価の着眼点 高次脳機能障害は、4能力に係るそう失の程度により行う。評価を行う際の要点は列記すれば、以下のとおりである。 @ 意思疎通能力(記銘・記憶力、認識力、認知力、言語力等) 職場において他人とのコミュニケーションを適切に行えるかどうか等について判定する。主に記銘・記憶力、認知力又は言語力の側面から判断を行う。 A 問題解決力(理解力、判断力等) 作業課題に対する指示や要求水準を正確に理解し適切な判断を行い、円 滑に業務が遂行できるかどうかについて判定する。主に理解力、判断力、又は集中力(注意の選択等)について判断を行う。 B 作業負荷に対する持続力、持久力 一般的な就労時間に対処できるだけの能力がが備わっているかどうかについて判定する。精神面における意欲、気分又は注意の集中の持続力・持久力について判断を行う。その際意欲又は気分の低下等による疲労感や倦怠感を含めて判断する。 C 社会行動力(協調性等) 職場において他人と円滑な共同作業、社会的行動ができるかどうか等について判定する。主に協調性の有無や不適切な行動(突然大した理由もないのに怒る等の感情や欲求のコントロールの低下による場違いな行動等)の頻度についての判断を行う。 ( イ ) 身体性機能障害 脳の損傷による身体性機能障害については、麻痺の範囲(四肢麻痺、片麻痺及び単麻痺)及びその程度(高度、中等度及び軽度)並びに介護の要否及びその程度により障害等級を決定するものとする。 麻痺の程度については、運動障害(運動性、支持性、巧緻性及び速度についての支障)の程度をもって判断するものとする。 なお、麻痺の範囲及びその程度については、身体的所見及び MRI 、 CT 等によって裏付けることのできることを要するものとする。 ( 注 1) 四肢麻痺とは両側の四肢の麻痺、片麻痺とは1側の上下の麻痺、対麻痺とは両側上肢又は両下肢の麻痺、単麻痺とは上肢又は下肢の1肢のみの麻痺をいい、脳の損傷による麻痺については、通常対麻痺が生じる ことはない。 ( 注 2) 高度の麻痺とは、障害を残した上肢又は下肢の運動性・支持性がほとんど失われ、当該上肢又は下肢の基本動作(上肢においては物を持ち上げて移動させること、下肢においては歩行や立位)ができないものをいい、次のようなものが該当する (a) 完全強直又はこれに近い状態にあるもの (b) 上肢においては、3大関節及び5の手指のいずれの関節も自動運動によっては可動させることができないもの又はこれに近い状態にあるもの (c) 下肢においては、3大関節のいずれも自動運動によっては可動させることができないもの又はこれに近い状態にあるもの (d) 上肢においては、随意運動の顕著な障害により、当該上肢では物を持ち上げて移動させることができないもの (e) 下肢においては、随意運動の顕著な障害により、当該下肢の支持性及び随意的な運動性をほとんど失ったもの ( 注 3) 中等度の麻痺とは、障害を残した上肢又は下肢の運動性・支持性が相当程度失われ、当該上肢又は下肢の基本動作にかなりの制限があるものをいい、次のようなものが該当する。 (a) 上肢においては、障害を残した1上肢では仕事に必要な軽量の物おおむね 500 g)を持ち上げることができないもの又は障害を残した1上肢では文字を書くことができないもの (b) 下肢においては、障害を残した1下肢を有するため杖若しくは硬性装具なしには階段を上がることができないもの又は障害を残した両下肢を有するため杖若しくは硬性装具なしには歩行が困難であるもの ( 注 4) 軽度の麻痺とは、障害を残した上肢又は下肢の運動性・支持性が多少失われており、当該上肢又は下肢の基本動作を行う際の巧緻性及び速度が相当程度損なわれているものをいい、次のようなものが該当する。 (a) 上肢においては、障害を残した1上肢では文字を書くことに困難を伴うもの (b) 下肢においては、日常生活はおおむね独歩であるが、障害を残した1下肢を有するため不安定で転倒しやすく、速度も遅いもの又は障害を残した両下肢を有するため杖若しくは硬性装具なしには階段を上ることができないもの (身体性機能障害については、以下の基準により第1級〜第 12 級の7段階で決定することとなる。) a 「身体性機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの」は、第1級とする。 次のものが、これに該当する。 (a) 高度の四肢麻痺が認められるもの (b) 中等度の四肢麻痺であって、食事、入浴、用便、更衣等に常時他人の介護を要するもの (c) 高度の片麻痺であって、食事、入浴、用便、更衣等に常時他人の介護を要するもの b 「身体性機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、随時他人の介護を要するもの」は、第2級とする。 次のものが、これに該当する。 (a) 高度の片麻痺が認められるもの (b) 中等度の四肢麻痺であって、食事、入浴、用便、更衣等に随時他人の介護を要するもの c 「生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、身体性機能障害のため、労務に服することができないもの」は、第3級とする。 中等度の四肢麻痺(上記aの (b) 又はbの (b) に該当するものを除く。)が認められるものが、これに該当する。 d 「身体性機能障害のため、極めて軽易な労務のほか服することができないもの」は、第5級とする。 次のものが、これに該当する。 (a) 軽度の四肢麻痺が認められるもの (b) 中等度の片麻痺が認められるもの (c) 高度の単麻痺が認められるもの e 「身体性機能障害のため、軽易な労務のほか服することができないもの」は、第7級とする。 次のものが、これに該当する。 (a) 軽度の片麻痺が認められるもの (b) 中等度の単麻痺が認められるもの f 「通常の労務に服することはできるが、身体性機能障害のため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」は、第9級とする。 軽度の単麻痺が認められるものが、これに該当する。 g 「通常の労務に服することはできるが、身体性機能障害のため、多少の障害を残すもの」は、第 12 級とする。 次のものが、これに該当する。 (a) 運動性、支持性、巧緻性及び速度についての支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺を残すもの (b) 運動障害は認められないものの、広範囲にわたる感覚障害が認められるもの (参考) @ 軽微な隋意運動の障害又は軽微な筋緊張の亢進が認められるもの A 運動障害を伴わないものの、感覚障害が概ね1上肢又は1下肢の全域にわたって認められるもの イ 非器質性の障害 ( ア ) 非器質性精神障害の後遺障害 脳の器質的損傷を伴わない精神障害(以下「非器質性精神障害」という。)の後遺障害が存しているというためには、次のaの精神症状のうち1つ以上の精神症状を残し、かつ、bの能力に関する判断項目のうち1つ以 上の能力について障害が認められることを要するものとする。 a 精神症状 (a) 抑うつ状態 (b) 不安の状態 (c) 意欲低下の状態 (d) 慢性化した幻覚・妄想性の状態 (e) 記憶又は知的能力の障害 (f) その他の障害(侵入、回避、過覚醒、感情麻痺の状態) 各精神障害の内容については、後記の「(参考2) (1) 精神症状」参照 b 能力に関する判断項目 (a) 身辺日常生活 (b) 仕事・生活に積極性・関心を持つこと (c) 通勤・勤務時間の遵守 (d) 普通に作業を持続すること (e) 他人との意思伝達 (f) 対人関係、協調性 (g) 見辺の安全保持、危機の回避 (h) 困難、失敗への対応 ( イ ) 就労意欲の低下等による区分 a 就労している者又は就労していないが就労意欲のある者 現に就労している者又は就労意欲はあるものの就労していない者については、上記 ( ア ) のaの精神症状のいずれか1つ以上が認められる場合に、 ( ア ) のbの能力に関する判断項目(以下「判断項目」という。)のそれぞれについて、その有無及び助言・援助の程度(「時に」又は「しばしば」必要)により障害等級を決定するものとする。 b 就労意欲の低下又は欠落により就労していない者 就労意欲の低下又は欠落により就労していない者については、見辺日常生活が可能である場合に、 ( ア ) のbの (a) の見辺日常生活の支障の程度により障害等級を決定するものとする。 なお、勤労意欲の低下又は欠落により就労していない者とは、職種に関係なく就労意欲の低下又は欠落が認められる者をいい、特定の職種について就労の意欲のある者については、aに該当するものとする。 各能力の低下を判断する際の要点については、後記の「(参考2) (2) 能力に関する判断項目」参照 ( ウ ) 非器質性精神障害は、次の3段階に区分して障害等級を決定するものとする。 a 「通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」は、第9級とする。 次のものが、これに該当する。 (a) ( イ ) のaに該当する場合には、判断項目のうち (b) から (h) までのいずれか1つの能力が失われているもの又は判断項目の4つ以上についてしばしば助言・援助を必要とする程度の障害を残しているもの ( 例 ) 対人関係業務に就けないことによる職種制限が認められる場合 (b) ( イ ) のbに該当する場合には、見辺日常生活について特に助言・援助を必要とする程度の障害を残しているもの b 「通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、多少の障害を残すもの」は、弟 12 級とする。 次のものが、これに該当する。 (a) ( イ ) のaに該当する場合には、判断項目の4つ以上について時に助言・援助を必要とする程度の障害を残しているもの ( 例 ) 職種制限は認められないが、就労に当たりかなりの配慮が必要である場合 (b) ( イ ) のbに該当する場合には、見辺日常生活を適切又はおおむねできるもの c 「通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障のため、軽微な障害をのこすもの」は、弟 14 級とする。 判断項目の1つ以上について時に助言・援助を必要とする程度の障害を残しているものが、これに該当する。 ( 例 ) 職種制限は認められないが、就労に当たり多少の配慮が必要である場合 ( エ ) 重い症状を有している者(判断項目のうち (a) の見辺日常生活の能力が失われている者又は判断項目のうち (b) から (h) までのいずれか2つ以上の能力が失われている者)については、非器質性精神障害の特質上、症状の改善が見込まれることから、症状に大きな改善が認められない状態に一時的に達した場合であっても、原則として療養を継続するものとする。 ただし、療養を継続して十分な治療を行ってもなお症状に改善の見込みがないと判断され、症状が固定しているときには、治ゆの状態にあるものとし、障害等級を決定するものとする。 (参考1) @ 非器質性精神障害については、症状が重篤であっても将来において大幅に症状の改善する可能性が十分にあるという特質がある。 A 業務による心理負荷を取り除き、適切な治療を行えば、多くの場合おおむね半年〜1年、長くても2〜3年の治療により完治するのが一般的であって、業務に支障の出るような後遺症状を残すケースは少なく、障害を残した場合においても各種の日常生活動作がかなりの程度でき、一定の就労が可能となる程度以上に症状がよくなるのが通常である。 (参考2) 各精神症状、能力に関する判断項目等 (1) 精神症状 精神症状については、抑うつ状態、不安の状態、意欲低下の状態、慢性化した幻覚・妄想性の状態、記憶又は知的能力の障害及びその他の障害(衝動性の障害、不安愁訴など)の6つの症状の有無等に着目することとしているが、その内容は以下のとおりである。 @ 抑うつ状態 持続するうつ気分(悲しい、寂しい、憂うつである、希望がない、絶望的である等)、何をするのもおっくうになる(おっくう感)、それまで楽しかったことに対して楽しいという感情がなくなる、気が進まないなどの状態である。 A 不安の状態 全般的不安や恐怖、心気症、脅迫など強い不安が続き、強い苦悩を示す状態である。 B 意欲低下の状態 すべてのことに対して関心が湧かず、自発性が乏しきなる、自ら積極的に行動せず、行動を起こしても長続きしない。口数も少なくなり、日常生活上の身の回りのことにも無精となる状態である。 C 慢性化した幻覚・妄想性の状態 自分に対する噂や悪口あるいは命令が聞こえる等実際には存在しないものを知覚体験すること(幻覚)、自分が他者から害を加えられている、食べ物や薬に毒が入っている、自分は特別な能力を持っている等内容が間違っており、確信が異常に強く、訂正不可能でありその人個人だけ限定された意味付け(妄想)などの幻覚、妄想を持続的に示す状態である。 D 記憶又は知的能力の障害 非器質性の記憶障害としては、解離性(心因性)健忘がある。自分が誰であり、どんな生活史を持っているかをすっかり忘れてしまう全生活史健忘や生活史の中の一定の時期や出来事のことを思い出せない状態である。 非器質性の知的能力の障害としては、解離性(心因性)障害の場合がある、日常見辺生活は普通にしているのに改めて質問すると、自分の名前を答えられない。年齢は3つ、1+1は3のように的外れの回答をするような状態(ガンザー症候群、仮性痴呆)である。 E その他の障害(衝動性の障害、不定愁訴など) その他の障害には、上記@〜Dに分類できない症状、多動(落ち着きの無さ)、衝動行動、徘徊、身体的な自覚症状や不定愁訴などがある。 (2) 能力に関する判断項目 非器質性精神障害については、8つの能力について、能力の有無及び必要となる助言・援助の程度に着目し、評価を行う。評価を行う際の要点は以下のとおりである。 @ 見辺日常生活 入浴することや更衣をすることなど清潔保持を適切にすることができるか、規則的に十分な食事ができるかについて判定するものである。 なお、食事・入浴・更衣以外の動作については、特筆すべき事項がある場合には加味して判定を行う。 A 仕事・生活に積極性・関心を持つこと 仕事の内容、職場での生活や働くことそのもの、世の中の出来事、テレビ、娯楽等の日常生活等に対する意欲や関心があるか否かについて判定するものである。 B 通勤・勤務時間の遵守 規則的な通勤や出勤時間等約束時間の遵守が可能かどうかについて判定するものである。 C 普通に作業を持続すること 就業規則に則った就労が可能かどうか、普通の集中力・持続力をもって業務を遂行できるかどうかについて判定するものである。 D 他人との意思伝達 職場において上司・同僚等に対して発言を自主的にできるか等他人とのコミュニケーションが適切にできるかを判定するものである。 E 対人関係・協調性 職場において上司・同僚と円滑な共同作業、社会的行動ができるかどうか等について判定するものである。 F 見辺の安全保持、危機の回避 職場における危険等から適切に身を守れるかどうかを判定するものである。 G 困難・失敗への対応 職場において新たな業務上のストレスを受けたとき、ひどく緊張したり、混乱することなく対処できるか等殿程度適切に対応できるかということてを判断するものである。 (3) 重い障害を残している者の例 業務による心理的負荷を原因とする非器質性精神障害は、業務による心理的負荷を取り除き、適切な治療を行えば、多くの場合概ね半年〜1年、長くても2〜3年の治療により完治するのが一般的であるが、非常にまれに「持続的な人格変化」を認めるという重篤な症状が残存することがある。 「人格変化」を認める場合とは、 @ 著しく調和を欠く態度と行動、 A 異常行動は持続的かつ長期間にわたって認められ、エピソード的ではない、 B 異常行動は広範にわたり、広い範囲の個人的社会的状況に対して非適応的である、 C 通常、職業、社会生活の遂行上重大な障害を伴う、 という要件を満たすことが必要とされており、こうした状態はほとんど永続的に継続するものと考えられている。 (4) 障害の程度の判断 非器質性精神障害の後遺障害の場合、症状が固定する時期にあっても、症状や能力低下に変動がみられることがあるが、その場合には良好な場合のみ、あるいは悪化した場合のみをとらえて判断することなく、療養中の状態から判断して障害の幅を踏まえて判断するのが適当である。 (2) 脊髄障害 外傷などによりせき髄が損傷され、対麻痺や四肢麻痺が生じた場合には、通常、広範囲にわたる感覚障害や尿路障害(神経因性膀胱障害)などの障害が認められる。 さらに、せき柱の変形や運動障害(以下「せき柱の変形等」という。)が認められる場合も多い。このようにせき髄が損傷された場合には複雑な諸症状を呈する場合が多いが、せき髄損傷が生じた場合の障害等級の決定は、原則として、脳の身体性機能障害と同様に身体的所見及び MRI 、 CT 等によって裏付けることのできる麻痺の範囲と程度により障害等級を決定するものとする。 ただし、せき髄損傷に伴う胸腹部臓器の障害やせき柱の障害による障害の等級が麻痺により判断される障害の等級よりも重い場合には、それらの障害の総合評価により等級を決定するものとする。 なお、せき髄損傷による障害の等級が弟3級以上に該当する場合は、介護の要否及びその程度を踏まえて総合して障害等級を決定するものとする。 (参考1) せき柱に外力が加わることにより、せき柱の変形等が生じることがあるとともに、せき髄の損傷が生じた場合には、麻痺や感覚障害、神経因性膀胱障害等の障害が生じる。 このため、せき髄の損傷による障害に関する決定基準は麻痺の範囲に着目して等級を決定するものとなっているが、各等級は通常伴うそれらの障害も含めて格付けしたものである。 (参考2) せき髄は、解剖学的には第1腰椎により高位に存在し、第2腰椎以下には存在しないが、第2腰椎以下のせき柱内の馬尾神経が損傷された場合においても、せき髄の損傷による障害である下肢の運動麻痺(運動障害)、感覚麻痺(感覚障害)、尿路機能障害又は腸管機能障害(神経因性膀胱障害又は神経因性直腸障害)等が生じることからせき髄損傷に含めて運用する。また、広義のせき髄損傷には馬尾神経損傷が含まれる。 なお、せき髄の最下部(第3仙髄以下)の損傷では、下肢の運動障害は生じないが、馬尾神経が損傷された場合には、せき髄そのものとしては第3仙髄以下が損傷されたに過ぎない場合でも下肢の運動障害が生じることがある。 ア 「せき髄症状のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの」は、第1級とする。 次のものが、これに該当する。 ( ア ) 高度の四肢麻痺が認められるもの ( イ ) 高度の対麻痺が認められるもの ( ウ ) 中等度の四肢麻痺であって、食事、入浴、用便、更衣等に常時他人の介護を要するもの ( エ ) 中等度の対麻痺であって、食事、入浴、用便、更衣等に常時他人の介護を要するもの ( 例 ) 第2腰髄以上で損傷を受けたことにより中等度の四肢麻痺が認められ、神経因性膀胱障害及びせき髄の損傷部位以下の感覚障害が生じたほか、せき柱の変形等が認められる場合 イ 「せき髄症状のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、随時他人の介護を要するもの」は、第2級とする。 次のものが、これに該当する。 ( ア ) 中等度の四肢麻痺が認められるもの ( イ ) 軽度の四肢麻痺であって、食事、入浴、用便、更衣等に随時他人の介護を要するもの ( ウ ) 中等度の対麻痺であって、食事、入浴、用便、更衣等に随時他人の介護を要するもの ( 例 ) 第2腰髄以上で損傷を受けたことにより両下肢の中等度の対麻痺が生じたために、立位の保持に杖又は硬性装具を要するとともに、軽度の神経因性膀胱障害及びせき髄の損傷部位以下の感覚障害が生じたほか、せき柱の変形等が認められる場合 ウ 「生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、せき髄症状のため、労務に服することができないもの」は、第3級とする。 次のものが、これに該当する。 ( ア ) 軽度の四肢麻痺が認められるもの(上記イの ( イ ) に該当するものを除く。) ( イ ) 中等度の対麻痺が認められるもの(上記アの ( エ ) 又はイの ( ウ ) に該当するものを除く。) エ 「せき髄症状のため、極めて軽易な労務のほか服することができないもの」は、第5級とする。 次のものが、これに該当する。 ( ア ) 軽度の対麻痺が認められるもの ( イ ) 1下肢の高度の単麻痺が認めらけるもの オ 「せき髄症状のため、軽易な労務のほか服することができないもの」は、第7級とする。 1下肢の中等度の単麻痺が認められるものが、これに該当する。 ( 例 ) 第2腰髄以上でせき髄の半側のみ損傷を受けたことにより1下肢の中等度の単麻痺が生じたために杖又は硬性装具なしには階段を上がることができないとともに、せき髄の損傷部位以下の感覚障害が認められる場合 カ 「通常の労務に服することはできるが、せき髄症状のため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」は、第9級とする。 1下肢の軽度の単麻痺が認められるものが、これに該当する。 ( 例 ) 第2腰髄以上でせき髄の半側のみ損傷を受けたことにより1下肢の軽度の単麻痺が生じたために日常生活は独歩であるが、不安定で転倒しやすく、速度も遅いとともに、せき髄の損傷部位以下の感覚障害が認められる場合 キ 「通常の労務に服することはできるが、せき髄症状のため、多少の障害を残すもの」は、第 12 級とする。 次のものが、これに該当する。 ( ア ) 運動障害(運動性、支持性、巧緻性及び速度についての支障)がほとんど認められない程度の軽微な麻痺を残すもの ( イ ) 運動障害は認められないものの、広範囲にわたる感覚障害が認められるもの ( 例 ) 軽微な筋緊張の亢進が認められる場合、又は運動障害は伴わないものの、感覚障害がおおむね1下肢にわたって認められる場合 (3) 抹消神経障害 (4) 外傷性てんかん 外傷性てんかんに係る障害については、発作の型、発作回数等に着目し、次により障害等級を決定するものとする。 なお、1ケ月に2回以上の発作がある場合には、通常高度の高次脳機能障害を伴っているので、脳の高次脳機能障害に係る3級以上の決定基準により障害等級を決定するものとする。 (参考) なお書きの趣旨は、「1ケ月に2回以上の発作がある場合」には、医学経験側上、そのような症状で「てんかん」発作のみが単独で残存することは想定しがたく、通常は脳挫傷があり、高度な脳高次脳機能障害を残す状態でてんかん発作を伴っているケースが考えられることによるものである。 ア 「1ケ月に1回以上の発作があり、かつ、その発作が「意識障害の有無を問わず転倒する発作」又は「意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作」(以下「転倒する発作等」という。)であるもの」は、第5級とする。 (参考1) 転倒する発作には、「意識喪失が起こり、その後ただちに四肢等が強くつっぱる強直性のけいれんが続き、次第に短時間の収縮と弛緩をくりかえす間代性のけいれんに移行する」強直間代発作や脱力発作のうち「意識は通 常あるももの、筋緊張が消失して倒れてしまうもの」が該当する。 (参考2) 「意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作」には、意識混濁を呈するとともにうろうろ歩き回るなど目的性に欠く行動が自動的に出現し、発作中は周囲の状況に正しく反応できないものが該当する。 イ 「転倒する発作等が数ケ月に1回以上あるもの又は転倒する発作等以外の発作が1ケ月に1回以上あるもの」は、第7級とする。 ウ 「数ケ月に1回以上の発作が転倒する発作等以外の発作であるもの又は服薬継続によりてんかん発作がほぼ完全に抑制されているもの」は、第9級とする。 エ 「てんかんの発現はないが、脳波上明らかにてんかん性棘波を認めるもの」は、第 12 級とする。 (参考) てんかん及びてんかん発作の医学的事項等 てんかんは、反復するてんかん発作を主症状とする慢性の脳障害であり、そのてんかん発作とは、大脳のある部分の神経細胞が発作性に異常に過剰な活動を起こし、これがある程度広範囲な領域の神経細胞をまきこんで、一斉に興奮状態に入った場合に生ずる運動感覚、自律神経系又は精神などの機能の一過性の異常状態のことである。 なお、てんかんの診断については、発作の型の特定や脳波検査が重要であり、 MRI 、 CT 等の画像診断は、発作の原因等を判断するのに有用である。 (5) 頭痛 頭痛については、頭痛の型のいかんにかかわらず、疼痛による労働又は日常生活上の支障の程度を疼痛の部位、性状、強度、頻度、持続時間及び日内変動並び疼痛の原因となる他覚的所見により把握し、次により障害等級を決定するものとする。 ア 「通常の労務に服することはできるが、激しい頭痛により、時には労務に従事することができなくなる場合があるため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」は、第9級とする。 イ 「通常の労務に服することはできるが、時には労務に差し支える程度の強い頭痛が起こるもの」は、第 12 級とする。 ウ 「労働には差し支えないが、頭痛が頻回に発現しやすくなうたもの」1は、第 14 級とする。 (参考) 頭痛の型に関する医学的事項等 頭痛の型としては、次のようなものがある。 (1) 機能性頭痛 @ 片頭痛 A 緊張型頭痛 B 群発頭痛及び慢性発作性片頭痛 C その他の非器質性頭痛 (2) 症候性頭痛 @ 頭部外傷による頭痛 A 血管障害による頭痛 B 非血管性頭蓋内疾患に伴う頭痛 C 薬物あるいは離脱に伴う頭痛 D 頭部以外の感染症による頭痛 E 代謝性疾患に伴う頭痛 F 頭蓋骨、頸、眼、鼻、副鼻腔、歯、口あるいわ他の頭部・頭蓋組織に起因する頭痛又は顔面痛 G 頭部神経痛、神経幹痛、除神経後痛 (3) その他 分類不能な頭痛 (6) 失調、めまい及び平衡機能障害 失調、めまい及び平衡機能障害については、その原因となる障害部位によって分けることが困難であるので、諸症状を総合して等級決定するものとする。 ア 「生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高度の失調又は平均機能障害のために、労務に服することができないもの」は、第3級とする。 イ 「著しい失調又は平衡機能障害のために、労働能力の大部分(一般平均の4分の3程度)が失われているもの」は、第5級とする。 ウ 「中等度の失調又は平衡機能障害めために、労働能力の半分程度(一般平均人の2分の1程度)が失われているもの」は、第7級とする。 エ 「通常の労務に服することはできるが、めまいの自覚症状があり、かつ、眼振その他平衡機能検査の結果に明らかな異常所見が認められ、就労可能な職種の範囲が相当程度に制限されるもの」は、第9級とする。 オ 「通常の労務に服することはできるが、めまいの自覚症状があり、かつ、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められるもの」は、第 12 級とする。 カ 「めまいの自覚症状はあるが、眼振その他平衡機能検査め結果に異常所見が認められないものの、めまいのあることが医学的にみて合理的に推測できるもの」は、第 14 級とする。 (参考) 失調、めまい及び平衡機能障害の原因する医学的事項 頭部外傷後又は中枢神経系(脳及びせき髄)の疾病に起因する失調、めまい及び平衡機能障害は、内耳機能によるのみならず、小脳、脳幹部、前頭葉又はせき髄など中枢神経系の障害によって発現する場合が多いものである。また、けい部自律神経障害によるめまいも少なくない。 (7) 疼痛等感覚障害 ア 受傷部位の疼痛及び疼痛以外の感覚障害については、次により障害等級を決定するものとする。 ( ア ) 疼痛 a 「通常の労務に服することはできるが、時には強度の疼痛のため、ある程度差し支えがあるもの」は、第 12 級とする。 b 「通常の労務に服することはできるが、受傷部位にほとんど常時疼痛を残すもの」は、第 14 級とする。 ( イ ) 疼痛以外の感覚障害 疼痛以外の異常感覚(蟻走感、感覚脱失等)が発現した場合は、その範囲が広いものに限り、第 14 級とする。 イ 特殊な性状の疼痛 ( ア ) カウザルギ―については、疼痛の部位、性状、疼痛発作の頻度、疼痛の強度と持続時間及び日内変動並びに疼痛の原因となる他覚的所見などにより、疼痛の労働能力に及ぼす影響を判断して、次により障害等級を決定するものとする。 a 「軽易な労務以外の労働に常に差し支える程度の疼痛があるもの」は、第7級とする。 b 「通常の労務に服することはできるが、疼痛により時には労働に従事することができなくなるため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」は、第9級とする。 c 「通常の労務に服することはできるが、時には労働に差し支える程度の疼痛が起こるもの」は、第 12 級とする。 ( イ ) 反射性交感神経性ジストロフィ( RSD )については、@関節拘縮、A骨の萎縮、B皮膚の変化(皮膚温の変化、皮膚の萎縮)という慢性期の主要な3つのいずれの症状も健側と比較して明らかに認められる場合に限り、カウザルギ―と同様の基準により、それぞれ第7級、第9級、第 12 級に決定するものとする。 (参考) 疼痛に関する一般的事項等 外傷後疼痛が治ゆ後も消退せず、疼痛の性質、強さなどについて病的な状態 を呈することがある。この外傷後疼痛のうち特殊な型としては、末梢神経の不完全損傷によって生ずる灼熱痛(カウザルギ−)があり、これは、血管運動性症状、発汗の異常、軟部組織の栄養状態の異常、骨の変化(ズデ ック萎縮)などを伴う強度の疼痛である。 また、これに類似して、例えば尺骨神経等の主要な末梢神経の損傷がなくても、微細な末梢神経の損傷が生じ、外傷部位に、同様の疼痛がおこることがある(反射性交感神経性ジストロフィ( RSD )という。)が、その場合、エックス線写真等の資料により、上記の要件を確認することができる。 なお、障害等級認定時において、外傷後生じた疼痛が自然経過によって消退すると認められるものは、障害補償の対象とはならない。 3 その他 (1) 脳損傷により障害を生じた場合であって、当該障害について、省令別表第二上、該当する等級(準用等級を含む。)があり、かつ、生じた障害が単一であるときは、その等級により決定するものとする。 ( 例 ) 1側の後頭葉視覚中枢の損傷によって、両眼の反対側の視野欠損を生ずるが、この場合は、視野障害の等級として定められている第9級第3号により決定する。 (2) せき髄損傷により障害を生じた場合であって、当該障害について、省令別表第二上、該当する等級(準用等級を含む。)があり、かつ、生じた障害が単一であるときは、その等級により決定するものとする。 ( 例 ) 第4仙髄の損傷のため軽度の尿路障害が生じた場合は、胸腹部臓器の障害の等級として定められている第 11 級第 11 号により決定する。
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